本図より、lcbが後方に移動するほど横揺れ角は小さくなる傾向がある。これは、lcbが後方に移動し船体後半部排水量が相対的に増加することにより船体後半部形状がよりフラットとなり安定し横揺れしにくくなるものと推定される。
lcb変化による横揺れの傾向は先に示した上下加速度の傾向と相反するものであるため、高速艇が就航する航路の特徴を勘案した上でlcbを選定する必要がある。
(C)船底傾斜角シリーズ
図3.1.2)-26に船底傾斜角シリーズの数値計算結果を示す。
本図より、船底傾斜角が立ってくるほど横揺れ角は小さくなる傾向がある。この原因として船底傾斜が立ってくるほど横揺れに対する波浪モーメントが小さくなることが考えられる。上述(a)、(b)での考察結果からのみ判断すれば船底傾斜角は寝せた方が横揺れに対して有利なように思えるが、本結果からは船底傾斜をあまり寝せ過ぎると逆に波浪外力を受けやすく横揺れに対して不利となることが削る。
(3)計算法の相違による評価
図3.1.2)-27〜図3.1.2)-28に船底傾斜角シリーズにおける非線形計算結果の比較を示す。図3.1.2)-27には非線形計算[1][2]による周波数応答を線形計算結果と比較して示し、図3.1.2)-28には非線形計算による時系列データを示している。
図3.1.2)-27より、船底傾斜角の変化による上下加速度の定性的な傾向は線形計算と非線形計算で同じであるが、波長船長比が1.0〜1.5の同調点付近では非線形計算で得られる上下加速度が線形計算の約1/2になっていることが削る。これは、非線形計算に高速艇特有の衝撃力やチャインによる運動抑制影響を考慮しているためであるが、構造強度の検討など上下加速度の絶対量が問題となるときには線形計算の使用範囲に注意を要する。
図3.1.2)-28は、上下加速度の周波数応答が最大となる波長船長比1.25での上下加速度の時系列波形である。図3.1.2)-28に示すように高速艇の上下加速度は船体落下時の衝撃力により歪んだ応答を示すのが特徴であり、この衝撃力による上下加速度を如何にして軽減するかが高速艇の船型を決定する上で重要となる。
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